私が十代の頃からずっと夢見てきたこと。それは海外の、観光地でもお土産屋さんでもない、地元の人が毎日の買い物をする場所で買い物をしてみることだった。そして私がボリビアで最初に住んだ場所、コチャバンバのビジャパガドールはそんな私にまさにうってつけの場所だった。
コチャバンバ市はおおまかに、中心部から北側に裕福な住宅街、南側にやや貧しい、庶民的な区域が広がっている。ビジャパガドールは中心部からバスで南東に40分ほどいった所。観光客はおろか、外国人さえ見かけない。中心部からタクシーでこの地域に行こうとすると運転手に「危ないからそっちには行かないよ」と断られたこともあった。
スーパーもコンビニも無い。買い物は家から1ブロック半坂道を下りた市場(メルカド)でする。正式な市場の部分は屋根があり、通路沿いに1.5m四方ぐらいの区画があってたくさん並んでいて、区画を借りた人がそこで物を売っている。肉屋、野菜と果物、生活用品、エンパナダやサルテーニャと飲み物を飲食できる所、大きな金属の鍋からスープと食事を売っている長い髪を三つ編みしたチョリータ(原住民族の女性)達。まさに五感いっぱいに異国をかんじて私は興奮した。

買い物なんて、お金と物を交換するだけだから、何も難しくないはず。まずは食器を洗うためのスポンジが欲しいな。が、メルカドを見回して困惑した。まずは、パッと見て「これは何屋」と定義するのが難しい店ばかり。いろいろな物が小さな区画の三面にある壁や棚に所狭しとあって、自分で手に取ってみるのではなく、その真ん中に座っている店の主人に何が欲しいか言い、その人が出してきたものによって別の色、大きさなど、自分の望みを言ってみて、買うか買わないかを決める。それはスペイン語がまだカタコトで語彙も乏しい私には結構難しかった。皿を洗うやつ、というと洗剤を出してくる。違う、違う、手でスポンジを握る動作をすると金属のタワシのような物を出してくる。だいたい、私が探している物がこのお店にあるのか定かではない。何屋にいけば何があるのか?だいたいこの店は何屋なのか?そんな基本設定が違っていたのだ。あ~あ、やっぱり不思議の国のアリスだわ。
まあいい。皿は水と洗剤があればなんとか洗える。とりあえずバナナでも買って、明日の朝ごはんを確保しよう。屋根のあるメルカドの中だけでなく、周りの道路にも道端で野菜や果物を売っている人がたくさんいる。中にはバナナだけ売ってる人、アボガドだけ売ってる人など、いかにも自分のうちでとれた物を売ってお金にしようという感じの人もいる。私はなんとなく、メルカド内の場所を借りれない道端の人から買ってあげたい性分で、外に出た。バナナはだいたい誰に聞いても1ダース1ボリビアーノ(以下ボリと省略)だった。12本も買ったらダメになりそうだから、半分だけ買うことにした。お金を払うと、チョリータのおばあちゃんが、ナイロン袋に1本余分にバナナを入れて、「ヤピータ(おまけ)」と言って渡してくれた。外国人の私からぼったくるんじゃなくておまけまでくれて、なんていい人! またこの人から買えるように顔を覚えようと思うけど、ボリビアに着いたばかりの私にはチョリータ達がみんな同じに見えてしまう。せめて、今ちゃんとありがとうって言っておこう。
ボリビアでの買い物に慣れてくると、私はこのヤピータについて面白い法則を見つけた。なんと、少量買いするほどヤピータの割合が上がる!バナナ半ダース買うと必ず1本、時には長くは持たないよく熟れたのを2、3本つけてくれたりする。でもバナナ1ダース買うとヤピータは無かったり。パセリなんかも、1ボリの束は大きすぎるから半分買うと、ヤピータをどっさりつけてくれてる。少量しか買えない貧しい庶民の味方、ヤピータ!という感じ。私が道端の小売のおばちゃんを応援したいように、おばちゃん達もちまちま買いに来る私を応援してくれている。なんか私、ここ好きだな~と思う瞬間なのです。


